はじめに:知識を行動へ、最初の一歩を踏み出すハンズオン
前回の「実践編7」では、AI生成コンテンツの活用における成功と失敗の分かれ道を、具体的なケーススタディを通じて探りました。AIを「副操縦士」として活用し、人間ならではの価値を注入することの重要性をご理解いただけたかと思います。
さて、これまでの応用編や実践編のケーススタディで、「FAQ」と「スキーママークアップ」がAI時代のSEOにおいて極めて効果的であることが繰り返し示されてきました。しかし、「具体的にどうやればいいのか?」という手順の部分で、手が止まってしまう方も少なくないでしょう。
本記事では、理論を具体的な作業手順に落とし込むハンズオン(実践演習)として、自社サイトにFAQページ(またはセクション)を作成し、FAQPageスキーマを実装するまでの全プロセスを、ステップ・バイ・ステップで解説します。専門的なコーディング知識がなくても大丈夫です。このガイドに沿って、AIに選ばれるための強力な一歩を踏み出しましょう。
なぜFAQページとスキーマ実装が重要なのか?(簡単なおさらい)
- ユーザーのため:ユーザーが抱きがちな疑問に先回りして答えることで、満足度と信頼性を高めます。
- AIのため:Q&Aという明確な構造は、AIが内容を正確に理解し、SGEのAIオーバービューや強調スニペットの回答として引用するための、最高の「素材」となります。
- 検索結果のため:正しくスキーマを実装することで、検索結果にFAQがアコーディオン形式で表示される「リッチリザルト」となり、競合より目立ち、クリック率の向上が期待できます。
実践ステップ1:FAQに掲載する質問を収集する
まず、FAQの「ネタ」となる、ユーザーのリアルな質問を集めます。応用編1で学んだ手法を総動員しましょう。
【架空の会計ソフト「らくらく経理」のFAQを作成する場合】
- Google Search Consoleを深掘りする:自社サイトのGSCを開き、「らくらく経理」関連で表示されているクエリの中から、「料金」「乗り換え」「確定申告 初めて」といったキーワードを含む質問形式のものをリストアップします。
- 「他の人はこちらも質問」を参考にする:「会計ソフト 比較」「個人事業主 確定申告」などで検索し、表示される「他の人はこちらも質問」を全てメモします。
- 社内の知識を集約する:カスタマーサポートチームに「お客様から最もよく聞かれる質問トップ10」をヒアリングします。
【収集した質問の例】
- 「料金プランについて詳しく教えてください」
- 「個人事業主でも利用できますか?」
- 「簿記の知識がなくても使えますか?」
- 「他の会計ソフトからのデータ移行は可能ですか?」
- 「セキュリティ対策は万全ですか?」
実践ステップ2:FAQページ(またはセクション)を作成する
収集した質問を基に、ウェブページを作成します。既存のサービス紹介ページの下部にセクションとして追加する形でも、独立したFAQページとして作成する形でも構いません。
- 見出し構造を明確に:ページ全体のタイトルを<h1>、FAQセクションのタイトル(例:「らくらく経理に関するよくある質問」)を<h2>、個別の質問を<h3>でマークアップします。
- 結論ファーストで回答を書く:各回答は、「はい、可能です。」「〇〇円からご利用いただけます。」のように、まず直接的な答えから書き始めましょう。
【HTML構造の例】
<h2>らくらく経理に関するよくある質問</h2>
<h3>簿記の知識がなくても使えますか?</h3>
<p>はい、問題なくお使いいただけます。当ソフトは、取引を入力するだけで自動的に仕訳が行われるよう設計されており、簿記の専門知識がない方でも直感的に操作できます。</p>
<h3>他の会計ソフトからのデータ移行は可能ですか?</h3>
<p>はい、主要な会計ソフトからのデータ移行に対応しております。CSV形式でのデータインポート機能をご利用いただくことで、過去の取引データを簡単に引き継ぐことが可能です。</p>
実践ステップ3:スキーマコードを「自動生成」する
ここが本日のハイライトです。このFAQの構造を、JSON-LD形式のスキーマコードで記述しますが、手で書く必要はありません。 無料のジェネレーターツールを使いましょう。
【手順】
- ジェネレーターサイトにアクセス:「Merkle Schema Markup Generator」や「TechnicalSEO.com Schema Markup Generator」といったツールが有名です。ブラウザで検索してアクセスします。
- スキーマタイプを選択:サイト上で、「FAQ Page」というスキーマタイプを選択します。
- Q&Aをコピー&ペースト:ツール上に表示される「Question」「Answer」という入力欄に、ステップ2で作成した質問と回答を、一つひとつコピー&ペーストしていきます。「Add another FAQ」といったボタンで、Q&Aのペアを追加できます。
- コードをコピー:入力を終えると、画面の右側などに、JSON-LD形式のコードが自動で生成されます。このコード全体をコピーします。
[画像:スキーママークアップジェネレーターの画面イメージ。左側に入力欄、右側に生成されたコードが表示されている]
【生成されるコードの例】
<script type="application/ld+json">
{
"@context": "https://schema.org",
"@type": "FAQPage",
"mainEntity": [{
"@type": "Question",
"name": "簿記の知識がなくても使えますか?",
"acceptedAnswer": {
"@type": "Answer",
"text": "はい、問題なくお使いいただけます。当ソフトは、取引を入力するだけで自動的に仕訳が行われるよう設計されており、簿記の専門知識がない方でも直感的に操作できます。"
}
},{
"@type": "Question",
"name": "他の会計ソフトからのデータ移行は可能ですか?",
"acceptedAnswer": {
"@type": "Answer",
"text": "はい、主要な会計ソフトからのデータ移行に対応しております。CSV形式でのデータインポート機能をご利用いただくことで、過去の取引データを簡単に引き継ぐことが可能です。"
}
}]
}
</script>
実践ステップ4:実装と検証
最後に、生成されたコードをサイトに実装し、正しく認識されるかを確認します。
- サイトへの実装:コピーした<script>タグ全体を、対象ページのHTMLの<head>セクション内、または<body>セクションの末尾に貼り付けます。(WordPressの場合、「テーマファイルエディター」や、コード挿入用のプラグインを利用します)
- Googleリッチリザルトテストで検証:
- Googleの「リッチリザルト テスト」ツールにアクセスします。
- 実装したページのURLを入力し、「URLをテスト」ボタンをクリックします。
- 数秒後、テスト結果が表示されます。「検出された構造化データ」の中に「よくある質問」という項目が緑色のチェックマーク付きで表示されていれば、実装は成功です!エラーが出た場合は、メッセージを読んでコードを修正します。
[画像:Googleリッチリザルトテストの結果画面。「ページはリッチリザルトに対応しています」と表示され、「よくある質問」が検出されている様子]
まとめ:技術を味方につけ、着実に成果を出す
本記事では、FAQページの作成からスキーマの実装・検証まで、具体的な作業手順をハンズオン形式で解説しました。
- ユーザーのリアルな質問を集める。
- 結論ファーストで分かりやすいQ&Aコンテンツを作成する。
- ジェネレーターツールを使って、スキーマコードを簡単かつ正確に生成する。
- リッチリザルトテストで、実装が成功しているかを必ず確認する。
構造化データと聞くと難しく感じるかもしれませんが、便利なツールを使えば、誰でも正確に実装できます。この一歩が、AIとユーザーの両方からの評価を高め、検索結果での見え方を大きく変えるきっかけとなります。ぜひ、自社サイトで実践してみてください。
次回、「実践編9」では、AI時代のもう一つの重要な技術的設定、「実践ステップ: robots.txtでGPTBot制御」と題し、OpenAIなどのAIクローラーのアクセスをどう制御すべきか、そのメリット・デメリットと具体的な設定方法を解説します。