はじめに:コーディング不要でAIとの対話を円滑に
前回の「実践編14」では、音声検索最適化テストという実践的な手法を通じて、スクリーンなき世界で自社の情報がどう扱われているかを確認し、改善する方法を探りました。その中で、LocalBusinessやFAQPageといった構造化データ(スキーマ)の実装が、AIに情報を正確に伝える上で極めて重要であることが改めて浮き彫りになりました。
しかし、「スキーマが重要なのは分かったけれど、JSON-LDなんていうコードを書くのはハードルが高い…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、そのハードルを一気に解消する「スキーマ生成ツールの活用」に特化した、実践的なハンズオン(実践演習)をお届けします。コーディングの知識が一切なくても、簡単なフォーム入力だけで、正確な構造化データコードを自動生成できる便利なツールです。その使い方をマスターし、AIとの技術的な対話を、より簡単かつ高度なものにしていきましょう。
1. なぜ「スキーマ生成ツール」を使うのか?
手書きでJSON-LDコードを記述すると、カンマの抜けや括弧の閉じ忘れといった、ほんの小さな構文エラーで構造化データ全体が機能しなくなってしまうリスクが常に伴います。
スキーマ生成ツールを利用するメリットは明確です。
- 正確性:ツールのテンプレートに従って入力するだけで、構文的に正しいコードが自動で生成されるため、ヒューマンエラーを劇的に削減できます。
- 効率性:複雑なスキーマ(例:Recipe, Event)でも、必要な項目をフォームに埋めていくだけで、数分でコードが完成します。
- 学習ツールとして:どのような項目(プロパティ)を設定できるのかを、ツールのインターフェースを通じて視覚的に学ぶことができます。
2. 実践ワークショップ:レシピ記事のスキーマを作成する
今回は、料理ブログの記事を例に、Recipeスキーマを生成ツールで作成するプロセスを体験してみましょう。Recipeスキーマは、調理時間や材料、手順といった多くの要素を持つため、ツールの真価が発揮される好例です。
【想定するコンテンツ】
- 記事タイトル:「夏野菜たっぷり!絶品キーマカレーの作り方」
- サイト:架空の料理ブログ「おうちごはん研究所」
ステップ1:スキーマ生成ツールを選ぶ
まず、ツールにアクセスします。無料で利用できる代表的なツールには以下のようなものがあります。
どちらも機能的に優れており、直感的に使えます。今回は「TechnicalSEO.com」のツールを例に進めます。
ステップ2:スキーマタイプを選択し、情報を入力する
- ツールサイトにアクセスし、「Select schema type」のドロップダウンから「Recipe」を選択します。
- すると、レシピ情報を入力するためのフォームが表示されます。このフォームに、記事の内容を一つひとつ入力していきます。

【入力項目と内容の例】
- Name:夏野菜たっぷり!絶品キーマカレーの作り方
- Author:おうちごはん研究所
- Description:フライパン一つで30分で完成!初心者でも失敗しない、夏野菜の旨味が凝縮されたキーマカレーのレシピです。
- Image URL:完成したキーマカレーの写真のURL
- Prep Time / Cook Time(準備時間/調理時間):PT10M / PT20M (※PT10Mは10分を意味するISO 8601形式)
- Keywords:キーマカレー, 夏野菜, 簡単レシピ
- Recipe Yield(出来高):4人前
- Recipe Category:カレー
- Recipe Cuisine:日本料理
- Ingredients(材料):豚ひき肉 300g, 玉ねぎ 1個, … といった材料を一行ずつ入力します。
- Instructions(手順):調理手順をステップごとに分けて入力します。
ステップ3:生成されたコードをコピーする
フォームへの入力を進めると、画面の右側にJSON-LD形式のコードがリアルタイムで生成されていきます。全ての入力が終わったら、このコードをコピーします。
【生成されるコードの例(一部抜粋)】
<script type="application/ld+json">
{
"@context": "https://schema.org/",
"@type": "Recipe",
"name": "夏野菜たっぷり!絶品キーマカレーの作り方",
"author": {
"@type": "Person",
"name": "おうちごはん研究所"
},
"datePublished": "2025-07-15",
"description": "フライパン一つで30分で完成!初心者でも失敗しない、夏野菜の旨味が凝縮されたキーマカレーのレシピです。",
"recipeIngredient": [
"豚ひき肉 300g",
"玉ねぎ 1個",
"ナス 2本",
"パプリカ 1個"
],
"recipeInstructions": [
{
"@type": "HowToStep",
"text": "玉ねぎ、ナス、パプリカを粗みじん切りにする。"
},
{
"@type": "HowToStep",
"text": "フライパンに油を熱し、ひき肉と野菜を炒める。"
}
]
}
</script>
ステップ4:実装と検証
最後に、このコードをサイトに実装し、正しく機能するかを検証します。この手順は「実践編8」で解説したFAQページの場合と全く同じです。
- コピーした<script>タグを、対象記事のHTML内に貼り付けます。
- Googleの「リッチリザルト テスト」ツールで、実装したページのURLをテストします。
- 結果画面で「レシピ」という項目が有効(緑色のチェックマーク)として検出されれば成功です。
このRecipeスキーマを実装することで、検索結果に調理時間やカロリー、評価(レビューがある場合)などが表示されるリッチリザルトとなり、ユーザーのクリックを強く促すことができます。
3. まとめ:ツールを使いこなし、AIとの対話をリッチにする
本記事では、スキーマ生成ツールを活用して、コーディング知識なしで正確な構造化データを実装する具体的な手順を、ハンズオン形式で解説しました。
- スキーマ生成ツールは、正確なコードを、効率的に、誰でも作成できる強力な味方です。
- RecipeやHowToといった複雑なスキーマほど、ツールの恩恵は大きくなります。
- 生成・実装した後は、必ずリッチリザルトテストで検証する習慣をつけましょう。
スキーママークアップは、AIに対してコンテンツの豊かな文脈を伝えるための、最も直接的な手段です。生成ツールを使いこなすことで、この重要なプロセスを恐れることなく、むしろ楽しんで実践できるようになります。ぜひ、自社サイトの様々なコンテンツ(イベント情報ならEvent、商品情報ならProductなど)で、最適なスキーマの実装に挑戦してみてください。
次回、「実践編16」では、AIをライティングの「下書き」作成に活用する、「実践: メタディスクリプション自動生成」のワークフローと、その際のチューニングのコツについて解説します。